げじげじ日記

私の世界

元気

街に出てみると

元気な人はあまりいない

大きな声を張り上げて

元気な声を作ったりして

元気なふりをしている人は大勢いる

元気なことではなく

元気に見せ掛けることが重要なのだ

元気がないものはガス室に送られる

そう脅されているかのように

元気なふりをする

新鮮な魚を選別するかのように

元気なニンゲンが選別される


わたしには元気がない

元気があった頃もあった

だが今は尽きたようだ

元気のない人は

元気な人を見て

元気を貰いたがる

自分が見て元気になるために

元気に見せ掛けることを要求する

御免こうむる

わたしは毅然とした態度で

それを拒絶しなければならない


おまえのそのままの元気のない姿を

堂々と

相手に見せつけてやれ

それがおまえにできる

唯一の抵抗なのだ

目が覚める

7時48分

眠った時間を計算する

よく眠ったほうだ

でも起きる気にならない

起きても起きなくても同じだ

やることはない

腹が減っていたら食べる

腹は減っていない

やりたいことも

やるべきこともない

ながいながい18時間かそこらを

どうやって埋めるか

眠ってしまって

スキップできたらいいのに

もう眠れない

なにかの為に起きたのではなく

勝手に目覚めたので

眠ろうと思っても眠れない

わたしは今日の18時間かそこらを

楽しむのではなく

悲しむことに使う

楽しむ?なにを?

なにも楽しめない

そのことが一層悲しみを生む

楽しみも悲しみもなく

淡々と生きられたら

なんといいことか

わたしはきっと人生が

楽しいものでなければいけないと

思っていて

一層つらくなるのだ

元気のない人間は

そんなにだめなのか

起きて

外に出てはいけないのか

熱狂

心には浅いところと深いところがあって

感情のほとんどは浅いところから生まれる

身体をぶるぶる震わせていようと

浅いところから生まれた熱狂は

何も生み出さない

終わったあとは

孤独感しか残らない

熱狂とは人の生の感性からくるものではなく

頭で作り上げた種々の概念からくる
雲のようなもので

やる気と意欲に満ちて
攻撃的になり
声は上ずり
人生をかけたりしてしまう

熱狂は過度の希望のあらわれで
鬱屈が過度の絶望のあらわれであるのと
対になっている

どちらも物語が現実認識の要になっている

物語が作り出せれば希望となり
物語が壊れれば絶望となる

物語とは
自分はこういう人間で
こういう思想で
こういう育ちで
こういう夢がある
といった一連のものだ 

これらは物語として自分の本来の欲求よりも
強く作用する可能性がある

また、常に壊れる危険性がある

しばしばこの物語を支えるのが
仲間や同志といった現実に存在する人間からなる
カテゴリーであり
お互いに熱狂から醒めないように
励まし合う

熱狂からは醒めなければならぬ

どんな物語を持っていようが
腹は減るし
ゴミは出るし
部屋は汚れる

これらは物語と無関係に起きる

めんどくさいなあ、嫌だなあ
と思うが

物語のせいではない

淡々とやる以外にない

熱狂でもってやることを
わたしは止めたのだから

淡々と

わたしのかつての姿をわたしは覚えている

何をしていたわけでもないのに
やる気と意欲に満ち溢れていた頃の姿

今のわたしは
やる気もなければ意欲もない
そのことを
受け入れられないでいる

覚醒剤の切れた気分というのは
こういうものなのだろうか

他人との比較は
10年も前に卒業した
次は自分との比較を卒業すべきか

すべきか、と言っていられるほど
悠長な話でもなく
もはやそうしなければ
生きることが難しい

やる気も意欲もないが
生きねばならぬ
淡々と
淡々と
それでも心はまだ死んではいない

やる気と意欲に満ち溢れ
雨に濡れるのも全く気にせず
一心不乱にやるわたし

やる気も意欲もない
雨に濡れるのも嫌だ
それでも淡々とやるわたし

前者のわたしはもはや戻ってはこない
あれは儚い夢だったのだ

後者のわたしは
そんなに悪いものなのか
それはやってみなければ分からない
前者との比較だけで語れるようなものではない

会得

思考を停止した

脳みそはただの血管となって

血液が通り抜けてゆく

脳みその中にあった

血液から言葉の粒子を取り出すための網は

もうなくなった

血液は前後左右上下の

あらゆるものを溶かし

腹のなかで

血液から言葉が染み出して

心臓に到達し

かくして言葉は会得される

対話

責められる


おまえのような人間は
助ける価値がない
助けられる価値がない

おまえはこの世界に何をもたらした?
何も生まなかった
何も作らなかった
何も見せなかった

助ける?
何のために?

おまえはもう助からない
これは残念なことではない
残念だとおもう人間は
もういない
そのことを残念だとおもう人間も
もういない

助けるべき人間は数多く
おまえはリストの内にも入っていない

そうだな
助けてほしければ
助けるだけの価値を
示してみよ
助けたいと
思わせてみよ

われわれはその証明を見てから
助けねばと思うことにしよう

そうだもっとダンスを踊り
われわれの冷えた心を掻き立てよ

だめだだめだ心がこもっていない
ライフルに弾をこめるように
心をこめてダンスを踊るのだ

疲れた?
それでは助けるに値しない
疲労などという平凡な現象は
われわれの求めているものではない
われわれはそこからエネルギーを取り出せないのだ

なぜわれわれがおまえを助けないのか
分かっただろう
おまえからはエネルギーが取り出せないからだ

わたしを助けてください
そうすればわたしはきっとエネルギーを差し上げます
そう叫んでダンスを踊れ

だめだだめだ声が小さい!
われわれは耳が遠いのだ
もっと大きな声で言って貰わねば困る

なに、息苦しくて声が出ない?
またおまえはそうやって権利ばかりを主張する!
今やきれいな空気も
きれいな水も
稀少な資源なのだぞ
これも時代の変化なのだから
受け入れて貰わねば困る

分かっただろう
おまえはもう助からない
助かりたければ
最後の力をふり絞って
きれいな空気と水の残っている土地へ
出てゆくのだな
 
残念だよ
ほんとうに

狂気

わたしは何かによって狂わされたのではなく
狂気はわたしの内にあった

狂気を持つひとびとの中で
わたしの狂気は花を開いた

穏やかな狂気の中でものごとは楽しく
それでもどこかで狂いを感じている
わたしの狂気はまだ種子のままであるが
少しずつキズがつき始めている

狂いをどんどん感じるようになると
狂気はついに花を咲かせた
自分のことをおかしい、と感じるようになる頃には
もはやコントロールは失っていた
考えは散らばってまとまらず
何を感じているのか分からない
いや、感じていることは
「何かがおかしい」という違和感だけだった

「何かがおかしい…」をひたすら繰り返している
でもそれが何なのかまでは分からない

だがわたしはそれが何なのか分かりたかった
狂気の内にいて分かるはずもないのに

わたしは何かがきっかけで狂ったのではなく
狂気は様々な形でわたしの内にあった
それが時々花を咲かせた